今回のテーマは「講師として中・高校生向けに授業する現場から見た教育課題とは」として、この12年程NPOで中・高校で教壇に立っている会員の遠藤恭一さんのお話だった(2023年2月14日開催)。
冷たい小雨の中、11名の方が講演会に参加され、講義後にも教育を巡る活発な議論が行われた点から、やはり日本の将来は次世代の教育に関わっていると皆さんが感じていることの表れと感じました。
最初に彼が活動しているNPOの団体について説明され、その後こうした長い講師経験から現代の我が国の教育の課題を語って頂いた。
個別テーマは6つに分かれていたが、話の流れから具体的な例を説明されたこともあり、かなり広範囲な展開となった。
印象に残った点を挙げると:我が国と西欧の教育の基本的な考え方がどうやら違うこと。
西欧では、教育は個々の子供たちが生まれながらにしてもっている得意なものを伸ばすことに力を入れている。
一方、我が国では人間は生まれた時は皆知識も得意なものはなく、教育によって一律に一定水準まで育むことが重要との考え方であるという。
西欧のEDUCATIONとは本来生まれながらに個々人が持っている得意なこと引き出すといったギリシャ語が語源であるとのこと。
我が国 戦後の高度成長期には大量生産、大量消費といった一律に皆、同じことができる教育が巧く適合して成長の原動力となったが、時代が変わりICT全盛時代となった今は創意工夫や個別アイデアが重要な要素となり、こうした時代変化に教育が残念乍ら追い付いていない。
明治維新を成し遂げたられたのは、江戸時代には260の藩が独自の教育によって多様性が確保されていたが故に、改革が比較的スムースに行われたのではないかとの話もあった。
最終的には、いつの間にか教室の主体が生徒から先生になっており、生徒は先生の話を座学で聴くだけとなっており、自ら考え発言することが重要なグローバル時代に対応できていない。
『伝えるから生徒と一緒に考える、生徒の皆が夫々意見を個別に発表・議論・討議する』ことが問われているにも拘わらず、教室での授業は相変わらずの先生から一方通行で伝える授業が実施されている。
遠藤さんは生徒と一緒に考える授業、なぜそう考えるのかを中心とする授業を推進しているという。
勿論、1クラスの人数が多く(今は35人前後)討議をするには多すぎる面もある。
我が国の教育の将来についてはあまり楽観視していない様子であったが、ICTへの対応も徐々に浸透しており、ゆっくりだが変化への対応も進んでいることに望みを繋ぎたいとしていた。
(文責 岡本健一)